集成材の品質保証JAS
JASとは
Japanese Agricultural Standardの略称で「日本農林規格」のことです。一般には加工食品などでおなじみのマークですが、集成材や合板など木材加工品にもこのJASマークを表示する制度があります。
集成材の日本農林規格 [平成30年3月29日(農林水産省告示第683号)]
JASと集成材
JAS規格では集成材の外面の品質だけでなく、見ただけではわかりにくい接着性能、強度性能、ホルムアルデヒド放散量などについて、試験方法と適合基準が定められています。
これら検査項目に合格する集成材にだけJASマークを表示することができ、使用者に対する集成材の品質を保証することができます。
用途に応じた集成材の選択
JASは集成材に対して、それが使用される場合の最低基準を保証しています。ですからJASマークの付いている集成材は、JASに定める基準以上の品質を持つ製品であるということになります。集成材の原材料である木材は天然物であるために、製品の品質にいくらかのばらつきがあることは避けられま せん。
JASはそのばらつきが一定の範囲内にあることも含めて基準化しています。集成材の使用に際しては、用途に応じた集成材の品種を接着性能・強度性能・その他の性能によって選択し、JASマークとともに、表示してある製造メーカーのマークを確認し、安心して使用できる集成材を選ぶことが大切です。
集成材の日本農林規格(JAS)の概要
構造用集成材
①断面の大きさにより、大断面、中断面、小断面に区分されます。
●大断面:短辺が15cm以上、断面積が300c㎡以上のもの。
●中断面:短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって大断面集成材以外のもの。
●小断面:短辺が7.5cm未満または長辺が15cm未満のもの。
②ラミナ(ひき板)の構成により、同じ品質のラミナを積層した同一等級構成集成材と、外側の層ほど強度の強いラミナを配置して積層した異等級構成集成材(対称構成、非対称構成、特定構成)に区分されます。
異等級構成集成材のうち、ラミナの品質の構成が中心軸に対して対称であるものを対称構成、より強度を要求される側のラミナの基準を強くし、その構成が中心軸に対して対称でないものを非対称構成といいます。また、対称異等級構成のうち、曲げ性能を優先したラミナ構成を特定対称構成といいます。
ラミナの構成例
L125とは、ラミナの曲げヤング係数が12.5(Gpa 又は 103N/m㎡)を示しています。
③強度等級は、曲げヤング係数(たわみにくさの指標を表すE)と曲げ強さを表すFの組み合わせの等級区分により表示されます。 E-Fの等級は樹種やラミナの構成等により何種類もあります。
標準的な構造用集成材の強度等級
樹種 | 対象異等級構成 | 同一等級 |
---|---|---|
スギ | E65-F225 E75-F240 |
E65-F255 E75-F270 |
スプルース | E95-F270 | E85-F300 |
ヒノキ | E105-F300 | E95-F315 |
オウシュウアカマツ | E105-F300 | E105-F345 |
カラマツ | E95-F270 E105-F300 |
E95-F315 E105-F345 |
ダフリカカラマツ | E120-F330 | E120-F375 |
ベイマツ | E105-F300 E120-F330 |
E105-F345 E120-F375 |
④集成材を使用する環境条件に応じ、接着剤の要求性能の程度を示す区分として、使用環境A、 B、 Cの区分があります。
使用環境A | 屋外(防水層の外側)での想定される環境に対応し、かつ、構造物の火災時において高度な接着性能が要求される環境その他構造物の耐力部材として、接着剤の耐水性、耐候性又は耐熱性について高度な性能が要求される環境 |
---|---|
使用環境B | 使用環境Cに加えて、構造物の火災時において高度な接着性能が要求される環境 |
使用環境C | 屋内(防水層の内側)での想定される環境に対応し、構造物の耐力部材として、接着剤の耐水性、耐候性又は耐熱性について通常の性能が要求される環境 |
※使用環境A、 B、 Cの正確な定義は「集成材の日本農林規格」を参照してください。
集成材とホルムアルデヒドについて
1.JAS規格の定めるホルムアルデヒド放散量基準
ホルムアルデヒドの放散量に応じた以下の4つの区分があり、この区分に基づく等級表示が義務づけられています。
2.集成材と建築基準法ホルムアルデヒド規制との関係について(平成15年7月1日から施行)
①集成材の軸材(柱、梁、長押、鴨居、敷居、窓枠、枠材、階段の手摺、支柱、側板など)は規制対象外です。自由に使用できます。ただし、線的な部分の面積が設置部分の見付面積の1/10を超える場合は規制対象となり、使用面積の制限を受ける場合があります。
②軸材、面財(床材、壁材、カウンターの天板、階段の踏板、蹴込板など)を問わず「F☆☆☆☆」は規制対象外です。自由に使用できます。
③「F☆☆☆」「F☆☆」の面材は、内装仕上材として使用する場合、使用面積の制限を受ける場合があります。
④「F☆S」の面材は、内装仕上材として使用できません。
区分 | ホルムアルデヒド放散量 平均値 |
ホルムアルデヒド放散量 最大値 |
---|---|---|
F☆☆☆☆ | 0.3mg/リットル 以下 | 0.4mg/リットル 以下 |
F☆☆☆ | 0.5mg/リットル 以下 | 0.7mg/リットル 以下 |
F☆☆ | 1.5mg/リットル 以下 | 2.1mg/リットル 以下 |
F☆S | 3.0mg/リットル 以下 | 4.2mg/リットル 以下 |
集成材と4VOCについて
平成20年4月1日に、(財)建材試験センターが主催する「建材からのVOC放散速度基準化研究会」において「建材からのVOC放散速度基準」が制定され、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びスチレン(以下4VOC)放散速度基準値が示されました。これを受けて、(社)日本建材・住宅設備産業協会を中心とした建材等の業界団体は、平成20年10月より化粧板、集成材等のVOC放散に関する自主規制を開始しました。この制度は、「建材からのVOC放散速度基準」を満足する建材に「4VOC基準適合」(商標登録済)という表示を認めるものです。集成材は、同制度において、4VOCの放散速度が基準値以下であることが確認されている資材のひとつとして認められています。
建材からのVOC放散速度基準(財)建材試験センター
対象VOC | 略記号 | 放散速度基準値() |
---|---|---|
トルエン | T | 38 |
キシレン | X | 120 |
エチルベンゼン | E | 550 |
スチレン | S | 32 |
対象VOCが基準値以下であることが確認されている資材
要件 | 備考 | |
---|---|---|
集成材 |
ユリア樹脂接着剤、メラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、及びレゾルシノール樹脂接着剤またはこれらを共縮合または混合した接着剤を用いた製品。 但し、水性高分子イソシアネート系接着剤を用いた集成材については、その接着剤に日本接着剤工業会の4VOC基準適合製品または放散速度基準以下であることを証明した製品であること。 |
「木質建材からのVOC照明・表示研究会」報告書(平成20年8月1日(一財)日本住宅・木材技術センター)による。 |